2.学校側の対応(2)

 (1)に述べたことはあくまで一般的な対応であって,すべてがそうであるとは限りません。進路指導は,業者が行う模擬テストのように,コンピュータにデータをインプットして機械的に処理するわけではありません。あくまで担任の教師,つまり,人間が行うものです。

 したがって,先生によって,対応は千差万別であるといっても過言ではありません。同じ点数の生徒が同じ志望校を提示した場合,教師によって返ってくる答えがまるで違うということもありうるのです。

 では,なぜこのようなことが起こるのか。それは,進路指導の先生一人一人の「経験」,「性格」,「情熱」の問題です。これから述べることが,自分のクラスの生徒のことを真剣に考え,毎日,胃の痛くなるような思いをされている先生方にははなはだ無礼であることを承知の上で,あえて苦言を呈させていただきます。


① 経験の問題

 どうにもならないことですが,進路指導経験の長短は,非常に大きな問題です。どの世界でも,新米よりはベテランの方が安心ですから。極端な話,新卒(もしくは初めて中3を受け持つ)若い教師が担任だったとしたら,ツライものがあります。そもそも,彼らに進路指導をさせること自体,酷なことなのです。彼らにとっても,一度は経験しなければならないことなのですから,仕方ありませんが。

 その点,ベテランの教師でしたら,一応は安心です。経験は豊富であるに越したことはないのですから。ただし,進路指導は久しぶりという教師の場合,そうとは言い切れない面もあります。入試を取り巻く状況の変化についていけない可能性があるからです。数年の間にランクが逆転している高校があったり,大きな制度改革があったり・・・。もちろん,彼らもその点は十分に研究しているはずですが,どうしても,何年も前の自らの経験をベースに考えてしまう傾向があります。ブランクが開いてしまうと,新しい状況が実感できないのかもしれません。

 このようなことを述べると,「何だ,単なる学校批判じゃないか」と受け取られるかもしれませんが,すべての教師がそうであると言い切るつもりは毛頭ありません。先輩教師にアドバイスを求め,情報収集に励んでいる若手教師も多いでしょうし,久しぶりの進路指導だから,時代の波に乗り遅れないように意欲的に最近の状況を研究し,それに自分の経験を加味しようと努力しているベテラン教師も多いでしょう。だからといって,そうでない教師の存在を否定することもできないのです。


② 性格・情熱の問題

 この2つは一体であると考えて差し支えないと思います。ある意味で,個々の教師による対応の違いを顕著にする,最大の要因であるといえるでしょう。極端な例を挙げておくと,

 ア.優柔不断で,なかなか結論を出してくれない。
  ・言い回しがあいまい。延々と説明はするが,結局,どうなのかはっきりしない。
  ・第1志望に合格できそうな可能性について,ほとんど触れない。

 イ.ただひたすら手堅いだけ。生徒の希望をほとんど無視し,安全な線ばかり勧める。
  ・ボーダーより少し上の生徒に対しても,マイナス要因ばかり話して,あきらめさせる。

ウ.希望をほとんど通してくれる。でも,ふたを開けてみると,大量の不合格者が出る。

 ア,イのケースは論外です。これでは進路指導・三者面談の意味がありません。クラスの友人と,面談でどんなことを言われたのか,連絡を取り合ってみてください。多くの人がアかイのような対応だったとしたら,ちょっとヤバイ・・・。

 また,ウのように,学校側の主旨とは逆の指導をしてくる教師もいます。「1ランク落とせ」というところを,「もう少しで手がとどくからがんばれ」と励ましてくれるような教師です。具体的には,第1志望のボーダーに20点足りない生徒がいたとします。それを,
「20点も足りないから,あきらめたほうがいい」と言う場合と,「あと20点あれば何とかなるからがんばれ」と言う場合とがあるということです。状況は全く同じなのに,前者(マイナス思考)と後者(プラス思考)とでは,言われた側が受ける印象は,月とスッポンほどの違いがあります。

 ここは,大事なので,もう少し具体例を挙げておきましょう。20点足りない場合,

○ マイナス思考
 この時期にきて,20点も上乗せすることは難しい。仮に2学期中の4回のテストの平均で20点ずつ足りないということは,トータルで,80点も足りないということになる。
これでは,挽回は不可能だ。

○ プラス思考
 20点といえば,1教科たったの4点。計算問題1問,漢字2個で,4点くらい何とでもなる。それに,だれしも,テストでつまらないミスをしでかしているだろう。
・余白に書いた計算の答えを解答欄に書き直すとき間違えた
・解答欄そのものを間違えた
・記号で書くところを言葉で書いてしまった
・合わないものを選ぶのに,合うものを選んでしまった
さがせばいくらでも出てくるはず(ただし,あとの2つは問題をよく読まないからいけないんだが)。こんなミスを減らすだけで,20点くらいカンタンにアップする。そして,今から気持ちを入れかえて,入試までがんばれば,40点アップだって夢じゃない。

 どちら言い方をするかは,担任次第です。

 あなたは,どちらの言われ方をしたほうが「やる気」が起きますか?



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